【 進まぬ”12球団一括管理” 】複雑すぎるプロ野球中継(試合映像)の著作権とその問題点

JEY(ジェイ)

JEY(ジェイ)

 

プロ野球中継・番組の違法アップロードは年々増加する傾向にあります。
今回は以前投稿した記事に質問があったので改めてその詳細について解説します。

 

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当記事は以下の記事の詳細ページとなります。

 

試合映像の著作権が分散しているNPB

 

試合映像の著作権はどこが保有しているのでしょうか。
まずは中継映像から製作著作を抽出し、リーグごとに整理していきます。

※ 製作著作は試合終了時の映像に出るので誰でも確認可能です

① パ・リーグの試合映像の著作権 (有料放送)

 

パ・リーグでは各球団がそれぞれの主催試合の著作権を所有しています。
放送終了時の映像をみるとわかりますが、著作者に球団名が記載されています。

有料放送・配信はすべて球団が著作権を管理するシンプルな構造
とてもわかりやすい仕組みであり、理想的な管理システムをとっています。

[ パ・リーグ ]

製作著作 関係性 有料放送 ネット配信
ソフトバンク 福岡ソフトバンクホークス 球団 スポーツライブ+
DAZN
パ・リーグTV
ベースボールLIVE
楽天TVパ・リーグspecial
西武 埼玉西武ライオンズ 球団 フジテレビTWO
DAZN
パ・リーグTV
ベースボールLIVE
楽天TVパ・リーグspecial
楽天 楽天ゴールデンイーグルス
株式会社楽天野球団
球団 J SPORTS
DAZN
パ・リーグTV
ベースボールLIVE
楽天TVパ・リーグspecial
J SPORTSオンデマンド
ロッテ 千葉ロッテマリーンズ 球団 日テレNEWS24
日テレG+
DAZN
パ・リーグTV
ベースボールLIVE
楽天TVパ・リーグspecial
日本ハム 北海道日本ハムファイターズ
※ GAORAとの共同制作
共同保有 GAORA
スカイA
DAZN
パ・リーグTV
ベースボールLIVE
楽天TVパ・リーグspecial
オリックス オリックスバファローズ 球団 J SPORTS
DAZN
パ・リーグTV
ベースボールLIVE
楽天TVパ・リーグspecial
J SPORTSオンデマンド

 

 

② セ・リーグの試合映像の著作権 (有料放送)

 

セ・リーグに関しては著作権が複雑になっています。
放送局が制作著作となっており、DeNAを除き球団保有ではないのが特徴です。

親会社がテレビ局の場合や親会社の株主がテレビ局という場合もあります。
また、カープや中日のようにローカル局が製作著作を所持することもあります。

唯一、阪神主催試合に関しても球団保有に近い形となっています。
Tigers aiは阪神電車の子会社である阪神コンテンツが運営しているためです。

[ セ・リーグ ]

製作著作 関係性 有料放送 ネット配信
カープ テレビ新広島+ J SPORTS (共同制作)
HOMEテレビ+ J SPORTS (共同制作)
RCC+ J SPORTS (共同制作)
広島テレビ+ J SPORTS (共同制作)

J SPORTS単独 (地方局放送がない場合)
地元
提携業者
J SPORTS J SPORTSオンデマンド
巨人 日本テレビ 親会社 日テレジータス DAZN
GLS
Hulu
DeNA 横浜DeNAベイスターズ
TBS 
球団
親会社株主
TBSチャンネル2 DAZN
ニコニコプロ野球チャンネル
Paravi
J SPORTSオンデマンド
ヤクルト フジテレビ 親会社株主 フジテレビONE DAZN
阪神 Tigers ai 阪神電鉄子会社 GAORA
スカイA
DAZN
中日 東海テレビ放送
CBCテレビ

J SPORTS単独 (地方局放送がない場合)
地元局
提携業者
J SPORTS DAZN
J SPORTSオンデマンド

 

 

③ BS放送の製作著作はかなり複雑

 

かなり複雑なのがBS無料放送の製作著作です。
BS民放局はキー局・ローカル局・球団が混じり合い、記憶するも困難です。

[ セ・リーグ ]

製作著作 関係性
BS日テレ 巨人主催 / 日本テレビ
カープ主催 / 日本テレビ・TSS
ソフトバンク主催 / 福岡放送
日本テレビ系列
BS-TBS DeNA主催 / TBS
カープ主催 / TBS・RCC

中日主催 / TBS・CBC放送
ソフトバンク主催 / TBS・福岡ソフトバンクホークス

西武主催 / TBS・埼玉西武ライオンズ
日本ハム / TBS・北海道日本ハムファイターズ

オリックス主催 / TBS・オリックスバファローズ
TBS系列
球団
BS朝日 カープ主催 / BS朝日・朝日放送
ヤクルト主催 / BS朝日・朝日放送

阪神主催 / BS朝日・朝日放送

ソフトバンク主催 / BS朝日・朝日放送

西武主催 / BS朝日・埼玉西武ライオンズ
楽天主催 / BS朝日・朝日放送

ロッテ主催 / BS朝日・朝日放送
日本ハム主催 / BS朝日・朝日放送

オリックス主催 / BS朝日・朝日放送
テレビ朝日
球団
BSフジ ヤクルト主催 / BSフジ
カープ主催 / TSS

中日主催 / 東海テレビ
ソフトバンク主催 / テレビ西日本

西武主催 / 埼玉西武ライオンズ
日本ハム主催 / 北海道文化放送

オリックス主催 / 関西テレビ
フジテレビ系列
球団
BSテレ東 ヤクルト主催 / テレビ東京
中日主催 / テレビ東京・テレビ愛知・テレビ大阪
ソフトバンク主催 / テレビ東京・BSテレ東

西武主催 / テレビ東京・BSテレ東
楽天主催 / テレビ東京・BSテレ東

ロッテ主催 / テレビ東京・BSテレ東
日本ハム主催 / テレビ東京・BSテレ東・テレビ北海道

オリックス主催 / テレビ東京・BSテレ東
テレビ東京系列
BS12トゥエルビ ソフトバンク主催 / 福岡ソフトバンクホークス
西武主催 / 埼玉西武ライオンズ
楽天 / 東北楽天ゴールデンイーグルス
ロッテ主催 / 千葉ロッテマリーンズ
日本ハム主催 /北海道日本ハムファイターズ
オリックス主催 / オリックスバファローズ
パ・リーグ球団

※ NHK地上波はNHKが製作著作、NHK BSでは表記なし

 

④ パ・リーグではPLMが権利を一括管理

 

パ・リーグでは前述の通り、各球団が試合映像の著作権を保持しています。
ただ、セ・リーグとは変わった形で試合の放映権が管理されているのが特徴です。

パ・リーグにはPLM(パシフィックリーグマーケティング)という組織が存在します。
PLMはパ・リーグ6球団が出資した会社で、リーグ単位で様々な事業を展開しています。

その中には、試合映像の放映権配信権の管理や販売する事業も含まれています。
こうしてひとつの組織で一括で管理することで、契約や各種対応がしやすくなっています。

ですので、違法アップロードがあった場合は以下のように表記されます。
球団名が表記されることはなく、管理団体の表記となるということですね。


引用 : YouTube

 

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理想は「試合映像のNPB一括管理」

 

現実的に試合映像の著作権の一括管理は難しいようです。
それぞれの利権が関わるため、面白くない球団も存在するのでしょう。

① “プロ野球版”の放送コンテンツ適正流通推進連絡会

 

結局、一括管理が進まないのは球団による人気度の格差なのかと思います。
確かにNPBなどが権利をすべて管理してしまうと色々と問題が生じてきそうです。

であれば、”プロ野球版”の放送コンテンツ適正流通推進連絡会はどうでしょう。
著作権はそれぞれが保持したまま、権利に生じる様々な問題を一任する形です。

現在、個々の著作権者に報告される著作権侵害もここにすべて集約する。
そうすることで配信サービスや著作権侵者をまたいだ形で処理が簡便となります。

「これはここ、あれはここ」と煩雑な手間もかなり簡素化されるでしょう。
個々で対応が異なったり、報告先がわからなかったすることもなくなってきます。

放送コンテンツ適正流通推進連絡会

テレビ番組の著作権の管理、その取扱いについて啓蒙けいもうするために設立されました。
東京、名古屋、大阪の局を中心に、全国のローカル局が連絡会に参加しています。

 

② 権利に関わる問題のデータを集積し分析

 

昨今、ネット配信も増えたことで権利侵害も増加してきています。
YouTubeを代表に様々なプラットフォームで違法行為が後を絶ちません。

そうした情報を1ヵ所に集約することでデータ分析も容易となります。
どういう手法で行われているか、どの球団の試合が多く投稿されるかなど。

近年は外国アカウントによる違法ライブ配信も目立つようになりました。
漫画の著作権侵害でも問題とされる国ですが、確認すると確かに多いようです。

そういった場合にも継続的に追っていくことでデータ蓄積も可能です。
個々の著作権者で対応しているとわからなかったこともみえてきたりもします。

また、今後はAI技術を活用することで分析も容易になるでしょう。
ですので、ただ削除申請を繰り返し続けてもデータは蓄積されません

 

③ 巧妙化する権利侵害に対しても解決しやすい

 

YouTubeではロゴや文字を隠し、どこの映像かわからないよう加工されています。
また、動画をトリミングして、映像の真ん中だけを投稿する手法もよくみかけます。

音声や解像度を操作することで検知されない方法もあるようです。
こうした方法は年々巧妙化し、いかに動画削除を回避するかに力が注がれています。

  • ロゴや配信名を隠す
  • 動画をトリミングする
  • 映像全体を小さく表示
  • 音声をズラす
  • 隠語を使う

 

しかし、一括管理で集約することでこうした方法も対処しやすくなります。
どんなに加工された映像でもNPBの試合映像はすべてそこに集めれば良いのです。

補足 : ロゴを隠しても意味はない

とはいえ、前述の通りどこが放送しようと放映権を得ているだけです。
“どの球団の主催試合なのか”がわかれば著作権者ははっきりしています。
つまり、ロゴを隠すること自体、ほとんど意味が無い行為だと言えます。

 

④ できない理由より”どうしたらできるか”を検討

 

こういう話になるとNPB関係の方はすぐに「難しい問題」と言います。
確かに難しい問題ですが、何年も前から体制が変わらないのも事実です。

自分の球団だけで解決しようとせず、NPB全体で取り組むことも必要でしょう。
各球団に担当部門はあるはずなので情報を持ち寄って協力することも可能です。

各球団から担当者を派遣する形でもできないことはないでしょう。
PLMの一部門では各球団から出向の形で行っているところもあります。

今後、デジタル資産をどう守っていくかは大きな課題となります。
NPB全体でできないかというと12球団でやる気になれば可能かと思います。

JEY(ジェイ)JEY(ジェイ)
とりあえずPLMがパ・リーグだけでも始めれば良いと思います。
上手くいけばセ・リーグにも広がるし、NPB全体にも広がるでしょう。

 

Jリーグやスポーツ以外の著作権の管理

 

プロ野球以外の著作権の管理はどうなっているでしょうか。
同じプロスポーツのJリーグとスポーツ以外の業界の現状をみていきます。

① Jリーグの試合映像は「Jリーグが一括管理」

 

ちなみに同じプロスポーツチームのJリーグはどうでしょうか。
Jリーグでは放映権も含め、ほとんどの権利が一括管理されています。

「Jリーグの公式試合・公式イベントにおける映像(動画)・静止画像等に関する著作権・著作隣接権」および「公式試合・公式イベントに関する選手・監督・コーチ等の肖像権」を管理し、保護・有効活用する目的で『Jリーグ肖像権・著作権・商標権等の利用規程』を定めています。

著作権について / J.LEAGUE

 

実際にYouTubeにあるJリーグの違法アップロードを調べてみました。
結果、削除対応を行うのはJリーグでチームや放送事業者ではないことがわかります。


引用 : YouTube

 

② スポーツ以外では「著作権一括管理」が通常

 

スポーツ以外の分野では著作権の管理はどうなっているでしょうか。
以下が各業界の著作権管理団体になりますが、一括管理が一般的となっています。

管理団体
音楽 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)
小説・脚本 公益社団法人日本文藝家協会
協同組合日本脚本家連盟
協同組合日本シナリオ作家協会
美術作品 一般社団法人日本美術家連盟(JAA)
一般社団法人日本美術著作権協会(JASPAR)
写真 一般社団法人日本写真著作権協会(JPCA)
デザイン 公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)
出版物 一般社団法人日本書籍出版協会(JBPA)
雑誌 一般社団法人日本雑誌協会(JMPA)
実演 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)
実演家著作隣接権センター(CPRA(クプラ))
レコード(CD等) 一般社団法人日本レコード協会(RIAJ)
放送 一般社団法人日本民間放送連盟(JBA)
ビデオ 一般社団法人日本映像ソフト協会(JVA)
映画 一般社団法人日本映画製作者連盟
出版物の複製
(新聞・書籍・雑誌等)
公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)
コンピュータ
ソフトウェア
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
ソフトウェア 一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)
肖像権 特定非営利活動法人肖像パブリシティ権擁護監視機構(JAPRPO)
著作権全般 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)

 

ちなみに、SONYの音源の無許可使用では以下の表記がでるようです。


引用 : YouTube

 

③ “著作権管理の一元化”へ向けて法改正

 

7月13日に「知的財産推進計画2021」にて著作権管理の一元化を発表しました。
著作権の集中管理団体をつくり窓口をひとつにすること、利用許諾の簡素化を行います。

これにより、著作権者は利用料徴収が行いやすくなり、不当な利用も制限できます。
法的整備が進むことにより、著作権侵害によって不利益が生じない仕組みと変わります。

 

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今回のまとめ

 

今回はプロ野球の試合映像の著作権について解説しました。
紹介してきたように現在の試合映像の著作権の所在はとても複雑です。

長い歴史の中で築かれてきた関係性の中、今状態となっています。
しかし、デジタル社会の現在において管理が非常に難しくなっています。

一括管理が進むのが理想でしょうが、腰が重いのも正直な所でしょう。
とはいえ、今後ますますデジタル資産の管理は難しくなっていきます。

リーグや球団の壁を越えて、NPB全体で考えていく姿勢も必要です。
今後どういった形でNPBがデジタル資産を守っていくのか注目しましょう。

 

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