スポーツ観戦時に写真や動画を撮影することは多いかと思います。
今回は試合観戦時に注意するべき撮影ルールとそれら権利について解説します。
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当記事は以下の記事の詳細ページとなります。
Jリーグでは私的目的以外のスタジアム内の撮影は禁止
Jリーグではスタジアムで撮影した試合動画のインターネットへの投稿は禁止となっています。
その旨は公式サイト内の「観戦マナー&ルール」というページの第4条 禁止行為に明記しています。
第4条 (禁止行為)
- 私的目的以外で、試合(本条においては試合前後に行われる練習、式典等を含む)及び観客等の写真撮影または動画撮影
- 試合の音声または映像の全部または一部を、インターネットその他メディアを通じて配信する行為
単に撮影すること自体は私的目的であれば問題ありません。
しかし、私的目的ではない行為はJリーグ所属クラブ統一で禁止されています。
① 「私的使用」と「私的使用ではないもの」
私的目的とはどのように定義されているのでしょうか。
ここでの私的目的は”私的使用”を指し、法律で以下のように定められています。
[ 著作権法第30条 ]個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること
簡単に言えば以下のようなものは”私的使用”に該当します。
- 個人で観戦した記念として楽しむ
- 家庭内で出来事の共有として楽しむ
逆に”私的使用ではないもの”は以下のようなものになります。
- YouTubeやSNSなどインターネット上への投稿
- 撮影した映像を無断で販売したり配布する行為
つまり、Jリーグではスタジアムでの撮影は「個人が楽しむもの」とされています。
チケットを購入した時点で”これに同意したもの”とされ、厳守する必要があります。
SNSは「私的使用」ではない
「個人のSNSは個人が楽しんでいるから私的使用だ」と言う人も多くいます。
しかし、何人が見ようとネット上は”公衆の場”とされ私的使用の範囲外となります。
② サガン鳥栖の「カメラ設置禁止」の通達
7月16日にサガン鳥栖では以下のような公式表明がありました。
【サガン鳥栖運営管理規定第5条10項】
試合の音声、映像、描写もしくは結果の全部または一部をインターネットその他のメディアを通じて配信すること。
また、許可なく試合会場へカメラを設置すること。
前述のように元々、Jリーグでは私的使用以外の利用は禁止されていました。
しかし、YouTubeやSNSなどネット上に試合映像を投稿する行為が後を絶たないの実情。
そのため、私的目的であっても許可がなく三脚や手すりなどに固定した撮影は禁止としました。
Jリーグ統一ルールよりもさらに厳しい内容で、禁止行為を厳しく対処する意思を示しています。
③ なでしこリーグとWEリーグの撮影ルール
女子サッカーのなでしこリーグにも以下のような記載があります。
■当リーグ主催試合において、望遠レンズを使用した写真撮影、ビデオカメラによる撮影は禁止いたします。
■当リーグ主催試合において、営利目的で競技、試合前後等セレモニー、観客等の写真撮影またはビデオ撮影は禁止いたします。
■当リーグ主催試合において、撮影した映像(静止画も含む)、音声の全部または一部を、リーグの許可なくインターネットその他のメディアを通じて配信することは禁止いたします。
2021年からスタートするWEリーグにも以下のような記載があります。
- 私的目的以外で、試合(試合前後に行われる練習、式典等を含む)及び観客等の写真撮影または動画撮影
- 試合の音声または映像の全部または一部を、インターネットその他メディアを通じて配信する行為
以上のように、基本的にはJリーグと同じ内容となっています。
サッカーのリーグに関してはほぼ統一されていると言って良いでしょう。
④ 2021YBCルヴァンカップ決勝のみSNS投稿解禁
上記の通り、プロサッカー界では基本的に撮影やSNS投稿は禁止されています。
しかし、2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝のみ解禁とJリーグ公式から発表がありました。
これはSNSでも話題となり、撮影禁止だとは知らなかったとの投稿も飛び交っています。
今回の解禁はあくまでも当カップ決勝のみの適用でシーズン中も解禁という訳ではありません。
昨今、様々なSNSの問題が発生しており、あくまでテスト段階だと思われます。
今後の解禁に向けてどう動いていくかはファンの行動次第で判断されていくでしょう。
SNSに写真・動画を投稿🤳#ルヴァンカップ決勝 では、定められたルールの範囲内で写真や動画をSNSに投稿できるようになりました!
スタジアムで楽しんでる様子をSNSに投稿して一緒に盛り上げましょう🏆✨
ガイドラインはこちら⏬https://t.co/bUa5uqvDqS@nge_official @crz_official #Jリーグ pic.twitter.com/loWPrXupwu
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) October 30, 2021
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各スポーツリーグでも私的目的以外の撮影は禁止
では、その他のスポーツリーグの撮影ルールはどうなっているのでしょうか。
各リーグのサイトから観戦時の撮影に関する禁止行為とその特徴についてみていきます。
① Vリーグの試合観戦時の撮影ルール
Vリーグの公式サイトでも禁止行為に以下のような文面があります。
Jリーグと同様に、私的目的以外となるネットへの投稿は禁止とされています。
(4) 禁止行為
「商業目的」や「Vリーグ機構ならびに第三者の権利を侵害する形」で大会の音声もしくは映像、静止画の全部または一部をインターネットその他のメディアを通じて配信する行為
ただし、JリーグとVリーグで少し文面上の違いも存在します。
Jリーグはネットへの投稿は全面禁止に対して、Vリーグでは条件付きで記載されています。
- 商業目的
- Vリーグ機構ならびに第三者の権利を侵害する形
2つ目の「権利を侵害する行為」に関しては明記がなく具体的には不明です。
ただ、映像には肖像権やパブリシティ権も存在し、放映権も関係してきます。
以上のように、商業目的や権利侵害に関して厳しく制限しています。
事実上、ネットへの投稿自体を禁止していると言ってようかと思います。
② Xリーグ(アメフト)の試合観戦時の撮影ルール
Xリーグの公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在しました。
1. 写真や動画の許可のないメディア掲載や販売などの商用利用は禁止となります。
2. 本人に無断で動画配信やSNSに投稿する事は違法になる場合もございますので、安易なアップ等をしないようにご注意下さい。
③ ホッケー日本リーグの試合観戦時の撮影ルール
ホッケー日本リーグ公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在しました。
試合中の写真撮影および動画撮影は個人での利用を目的とした場合に限り可能です。
※個人利用以外のメディア掲載やインターネット公開、商用利用を目的とした写真撮影・動画撮影については、主催者およびリーグの許可が必要です。~ 共通観戦マナー&ルール / ホッケー日本リーグ公式サイト (※ 規約によりリンクはトップページ)
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バスケットボールリーグでは”時間制限”を採用
バスケットボールでは男女ともに共通したルールが存在します。
時間は異なりますが、以下のように撮影できる時間を定めています。
① B.LEAGUEでは”15秒以内の制限”を設置
さらにB.LEAGUEの公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在します。
他と異なり、インターネットの記述はないですが私的目的以外の撮影は禁止されています。
試合中の写真撮影および15秒以内の動画撮影は個人での利用を目的とした場合に限り可能です。
※個人での利用以外のメディア掲載や商用利用を目的とした写真撮影・動画撮影については、クラブおよびリーグの許可が必要です。
B.LEAGUEの特徴としては時間制限が設けられているところです。
15秒以内であれば私的目的での撮影は許可し、それ以外は禁止となっています。
よく動画撮影はどの程度の時間なら問題ないのかという議論になります。
この取り決めは非常に明瞭でわかりやすいため参考にすべきものかと思います。
② Wリーグでは”2分以内の制限”を設置
Wリーグ公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在しました。
Wリーグの試合では、会場内でのフラッシュを使用した撮影、試合の2分以上の動画撮影、三脚の使用は禁止となっております。
お客様ご自身で撮影された写真・動画のアップロードは可能ですが、動画は2分以内とさせていただきます。~ 試合の写真・動画撮影について / Wリーグ公式サイト (※ 規約によりリンクはトップページ)
Wリーグの特徴はB.LEAGUEやFリーグと同様に時間制限を設置していることです。
また、2分(120秒)以内であればSNSなどインターネットへの投稿も可能となっています。
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その他のリーグの”特徴的な撮影ルール”
その他のリーグでは特徴的なルールが存在しました。
動画撮影自体を禁止したり、SNSの投稿を許可するものもみられます。
① ラグビートップリーグでは”動画撮影は禁止”
ラグビートップリーグの公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在しました。
場内及び試合中の写真撮影については個人での利用を目的とした場合に限り可能です。
以下の行為は禁止とさせていただきます。
- 試合動画の撮影
- 営利目的、また選手・スタッフの肖像権を侵害する撮影
ラグビートップリーグで特徴的なのは動画撮影の禁止です。
他のリーグでは撮影は許可していましたが、トップリーグでは撮影自体禁止となっています。
② Tリーグでは”試合の撮影禁止”と”SNS等の投稿OK”
Tリーグ公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在しました。
タオルタイム、タイムアウトを含むゲーム中の写真および動画撮影は、撮影に使用する機器の種類を問わず、一切禁止とします。
過度な撮影機材のお持ち込みや席を離れての撮影などは、他のお客様のご迷惑となりますのでご遠慮ください。
また、試合以外の写真撮影および15秒以内の動画撮影は、個人での利用を目的(個人のSNSなど)とした場合に限り可能です。
Tリーグの特徴として試合以外であれば個人のSNSの投稿を許可しています。
他のリーグがインターネットへの投稿を禁止している中で異例と言える対応でした。
③ Fリーグ(フットサル)では”60秒以内の制限”を設置
Fリーグ公式サイトでも禁止行為に同様の文面が存在しました。
・試合中の写真撮影、60秒以内の動画撮影およびSNSへの投稿を個人での利用を目的とした場合に限り、許可いたします。
・メディア掲載や商用目的での写真および動画の撮影については、権利元であるリーグまたはクラブの許可が必要です。
・60秒を越えた動画の撮影・投稿や、許可なくメディア掲載、商用目的で撮影・投稿した映像については、権利元であるリーグより消去、削除等の申し立てをさせていただきます。
Fリーグの特徴としてB.LEAGUEと同様に時間制限を設置していることです。
また、60秒を越える動画に関しては削除などの申請を行うことも記載しています。
※ 日本女子フットサルリーグでは記載なし
- アイスホッケーアジアリーグ 記載なし
- 女子日本アイスホッケーリーグ 公式サイトなし
- 日本プレミアリーグ(クリケット) 記載なし
- 日本女子クリケットリーグ 記載なし
- 日本ソフトボールリーグ 記載なし
- S/Jリーグ(バドミントン) 記載なし
- 日本ハンドボールリーグ 記載なし
- ジャパンウォーターポロリーグ 公式サイトなし
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禁止行為の整理と撮影制限が厳しい理由
基本的なルールは同じですが、個別に様々なルールもありました。
ここからは各リーグのルールを整理し、こうなる理由を考えていきます。
① 各リーグの撮影ルールのまとめ
以下、各リーグの撮影ルールをまとめます。
[ 各リーグの撮影ルール ]
内容 | その他の禁止事項 | |
---|---|---|
Jリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 |
|
なでしこリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 |
望遠レンズでの撮影禁止 ビデオカメラでの撮影禁止 |
WEリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 |
|
Vリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 |
席を離れての撮影禁止 フラッシュでの撮影禁止 |
Xリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 |
フラッシュでの撮影禁止 席を離れての撮影禁止 三脚での撮影禁止 望遠レンズでの撮影禁止 通路占拠・機材放置の撮影禁止 |
ホッケー日本リーグ | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 |
|
B.LEAGUE | 私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 私的目的の撮影可 (15秒以内) |
フラッシュでの撮影禁止 |
Wリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 私的目的の撮影可 (2分以内) インターネットへの投稿は可 (2分以内) |
フラッシュでの撮影禁止 三脚での撮影禁止 |
トップリーグ (ラグビー) |
私的目的以外の撮影禁止 インターネットへの投稿の禁止 動画撮影の禁止 |
三脚・一脚での撮影禁止 望遠レンズでの撮影禁止 フラッシュでの撮影禁止 |
Tリーグ |
私的目的以外の撮影禁止 試合の撮影禁止 SNSへの投稿可 (試合以外で15秒以内) |
過度な撮影機材の持ち込み禁止 席を離れての撮影禁止 |
Fリーグ | 私的目的以外の撮影禁止 SNSへの投稿可 (60秒以内) |
フラッシュでの撮影禁止 望遠レンズ・三脚での撮影禁止 通路占拠・立ち止まっての撮影禁止 |
インターネットへの投稿を許可しているのは3つのリーグのみです。
それ以外のリーグはインターネットへの投稿は禁止行為としています。
- Wリーグ 2分以内
- Tリーグ 15秒以内 (試合以外)
- Fリーグ 60秒以内
動画撮影を禁止しているのは以下のリーグです。
- ラグビートップリーグ
② 撮影に関する制限が厳しくなる理由
これまで説明したように撮影に関する制限は厳しくなっています。
そうなった理由として以下のような問題があげられるかと思います。
- SNSなどネット上での無許可による使用
- YouTube等で広告収益を得る行為が増加
- 性的目的の撮影やネットへの投稿が増加
- 撮影した動画や画像のネット上での売買
YouTubeやSNSが普及する前はここまで大きな問題ではなかったでしょう。
それら取り巻く環境により以前よりも撮影制限が厳しくなってきています。
近年は女性アスリートに対する撮影が問題として取り上げられています。
2021年に開催された東京オリンピックでもこの件に関して大きく問題視されました。

③ 撮影ルールは”施設管理権”で決定できる
これら撮影ルールは法律で定められたものではありません。
こうした取り決めは“施設管理権”という権利で守られています。
施設管理権とは、施設の所有者・管理者に認められる包括的な管理権で、その法的根拠は施設の所有権である。
利用する者は使用する以上はそのルールに従わなくてはなりません。
入場した時点でそれに同意したとみなされ、従えないなら退場となります。
球場もスタジアムも施設であるため施設管理権は適用されます。
映画館や美術館などで写真撮影ができないのとまったく同じことです。
④ 施設管理権を侵害した場合の罰則
撮影に関する禁止行為を行っても即逮捕される訳ではありません。
あくまでも施設利用時のルールであり、違法行為ではないためです。
しかし、附随する以下の”権利侵害”とされる可能性はあります。
これらの権利侵害と判断された場合は損害賠償請求の裁判へ発展します。
[ 権利侵害の可能性 ]
内容 | |
---|---|
放映権の侵害 | 許可されていない者が試合を映像を配信した場合 |
肖像権の侵害 | 無断で選手の肖像(人の容姿)をネットに公開した場合 |
パブリシティ権の侵害 | 著名な選手の肖像を利用して収益を得た場合 |
また、関係者の注意された際に揉めたりすると更にやっかいです。
営業の妨げとなったとして威力業務妨害で逮捕される場合もあるでしょう。
また、プロスポーツであれば試合中断により営業の妨げにもなります。
その場合は”興行に損害を与えた”として損害賠償請求となる場合もあります。
合わせて読んで深く理解しよう
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今回のまとめ
今回は試合観戦時の撮影ルールについて話を進めてきました。
各リーグによって撮影について様々な取り決めが提示されています。
しかし、多くの場合でそのルールを認識していない事実もあります。
告知自体が不十分なのもありますが、特に気にしていないのも現実です。
現在では多くSNSで試合観戦時の画像や映像が投稿されています。
しかし、多くの場合でネットへの投稿は禁止されているのが現状です。
厳しすぎるとの意見は同意できますし、確かにそう思います。
しかし、そうなった理由について考えるとリーグ側の考えもわかります。
多くの人にスポーツの興奮を伝えたいというのはみんなが思うこと。
お互いの意見を尊重し合い撮影するかを今一度考えても良いかも知れません。
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